コラボレーティブ(collaborative)を英和辞書で引くと、「協力的な、協力する、合作の、共同制作の」と書かれています。コラボレーティブ・ワークとは、そのことばの示す通り「複数の人または組織が、共通の明確な目的に向かって協力してことを進めること」を示します。それは、複数の構成要素からなり、そこに関係性が生まれているという意味で、ひとつのシステムと捉えることができます。日常生活からビジネス、政治まで、われわれのまわりの多くのことが、コラボレーティブ・ワークであり、人間活動システムのひとつのサブシステムとしても見ることができます。

例えば、友達との卒業旅行のような例も考えられます。パリに8日間の旅行を3人の友達で行く場合を考えてみましょう。期間はいつからいつまでか、どの飛行機で行くか、旅行代理店はどこを使うか、予算はどれぐらいか、滞在中はどのような所に訪問するかなど、たくさんのことを計画すると思います。しかも、計画を立てたり、旅行代理点などへの連絡、旅行に持っていくものの準備など、これも友達や家族とのコラボレーティブ・ワークであり、人間活動システムのサブシステムです。

もちろん、普段の仕事でも多くのコラボレーティブ・ワークを見つけることができます。日常業務そのものが、複数の人たちが共通の目的に向かって業務を遂行しています。期間を区切ったプロジェクトも、コラボレーティブ・ワークのひとつと考えることができます。これらの例に共通するポイント、つまりコラボレーティブ・ワークを構成する項目には何があるのでしょうか。共通の目的、参加メンバー、メンバーの役割分担、計画(スケジュール、予算)、計画の前提や仮定を挙げることができます。それらが、コラボレーティブ・ワークというシステムを構成する要素と見ることができます。友達との卒業旅行で見てみましょう。パリに8日間の卒業旅行をして思い出を作るといったことが目的でしょう。参加メンバーは、友達3人組み。メンバーの役割分担は、旅券の手配、パリの滞在期間の計画、写真を撮るなど、いろいろな内容を誰が行うかを決めます。スケジュールや予算は、もちろん最初に決めておきます。計画の前提としては、例えば、パリは安全なので旅行が中止になることはない、卒業旅行までには全員就職が決まっていて不参加の人はでないなど、計画を立てるに際しての暗黙の仮定が存在しています。

またプロジェクトとコラボレーティブ・ワークの差も確認しておく必要があります。大きな違いは、プロジェクトはコラボレーティブ・ワークに含まれるのですが、必ず締切、つまり期間が限定されているということが特徴です。それに対してコラボレーティブ・ワークには、期間のあるプロジェクトもありますし、期間は限定されずに、みんなの共通の目的を実現させるために複数の人たちが永続的に協力しあっていくものと、大きくは2つに分けることができます。期間限定のプロジェクトだけでなく、永続的に協力しあっていくケースも含めて考えるのがコラボレーティブ・ワークの特徴になります。システムとして見た場合は、終わりがあるものと、構成要素が増えたり要素の関係が変化するなどが永遠と続くものの2つとして捉えることができます。また、計画の前提や仮定も意識して認識する点も、コラボレーティブ・ワークの大きな特徴です。

永続的に協力しあい、前提や仮定を意識しているコラボレーティブ・ワークの例として新規事業の立ち上げが考えられます。共通の目的として、ある事業を立ち上げ永続的に会社が成功し続けること。参加メンバーは、設立者と会社成長の過程で参加してくる人たち。メンバーの役割分担は、企画、営業、経理、製造・制作などの各々の業務。そして事業計画(スケジュール、予算)。始める事業の市場規模や成長性、成功要因などの計画の前提や仮定。このようにコラボレーティブ・ワークを構成する項目を挙げることができます。しかも事業の立ち上げに終わりということはありません。

本書では、「複数の人または組織が、共通の明確な目的に向かって協力してことを進めること」、そして構成する項目として、「共通の目的、参加メンバー、メンバーの役割分担、計画(スケジュール、予算)、計画の前提や仮定が存在するもの」をコラボレーティブ・ワークと定義し、ひとつのシステムとして捉え、事項以降の議論を進めていきます。次に、コラボレーティブ・ワーク・マネジメントの代表的な事例として、SCM(Supply Chain Management)を考えてみましょう。